汚レ唄
《蒼》1998【14歳】その3
1週間はあっという間に過ぎていき、遂に、コンサート当日になった。
「蒼!!どうじよー!!!!!」
何故か麻緋が俺の部屋に来て泣いている。
こんな麻緋見たことないけど、めちゃくちゃ可愛い。
何を着て行けばいいのか悩んでて、悩みすぎた結果、こんな状態になっている。
だけど、開演までまだまだ充分に時間はあるし、今からそんなに焦っても。という気もしている。
しかも朝っぱらから麻緋に起こされ、俺は、既に準備万端だった。
もっと寝ていられたのに、起こされたことに少しは腹立ったけど、寝起き早々に麻緋の顔が見れたから、まあ良しとしよう。
「急がなくてもまだ充分時間あるって」
何時間前から並ぶ気?と冗談めかして言うものの、麻緋の顔は半端なく真剣で、
「ダメなの〜!!早く行って1番前で見るの!!」
なに、このキャラ。可愛すぎるでしょ。
子供のようにはしゃぐ麻緋が可愛く見えてしょうがなかった。
好きでいるのをやめようとしてたのに、コレだし。
わざと俺を引き止めてるようにしか感じられねぇ。
軽く溜息をつくと麻緋は
「真剣に考えてんのに!蒼も真剣に考えてよ」
と無茶な注文をして部屋から出て行った。
麻緋が可愛くて可愛くて、いつものツンツンした麻緋じゃなくて、俺は猛烈に戸惑ってるわけよ。
それを真剣に考えろって……そこまで頭まわりませんから。
「俺の気持ちも知らないで」
今さっき麻緋がいた所を見て呟く。
誰もいないから返事なんてないけどさ。
扇風機のスイッチを押して、ベッドの上であぐらをかいて雑誌を読んでいた。
コレは家にあった雑誌で、おっさんたちが集う床屋にも関わらず、若者系ファッション雑誌があったので、こっそり持ち出したものだった。
こんなの本当に流行るのかよという胡散臭いアイテムもあれば、いいなと思えるものもある。
だけど、雑誌に載ってるのってどれも結構いいお値段だし。
ふーっと再び溜息をついたとき、バン!!!!とドアが壊れそうなくらい勢いよく開いた。