汚レ唄
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暫く歩くとザー……ザー……と静かな波の音が聞こえてきた。
ふんわりと生暖かい風が塩の香りを運んでくる。
「麻緋、ここなら遠慮しなくていいよ」
目の前に広がる果てしなく続く海、コンサート終わりで辺りも暗い。
星が1つ2つと見え出した頃だった。
誰かがもし通ったとしてもこちらの顔までは見えないだろう。
「歌っていいんだよ」
俺がそういうと麻緋は何かが切れたように走り出して波打ち際で立ち止まった。
俺も後に続くように走る。
砂に足を取られながら、麻緋の後姿を追いかける。
砂が靴の中に入って気持ち悪い。
麻緋は波音をじっくり聴くと深く息を吸った。
そして瞳を閉じると乾ききった喉を潤すような勢いで歌い始めた。