汚レ唄
ストッパーが外れたように、麻緋の声が爆発する。
麻緋の歌声を波の音が包み込むようだった。
何処までだって麻緋の声は届くだろう。
そう。
海の向うにいる先輩にだって。
海を越えて、麻緋の歌声は先輩に届くくらい透き通っていた。
真っ直ぐ芯を捕らえたような迷いの無い歌声。
ジリジリと足先の力がなくなっていくようだ。
ガクガクと膝が笑い始め、立っているのもやっとの状態になる。
やばい、もっていかれる。
麻緋の歌声に圧倒され俺はその場に座り込んだ。
それでも麻緋は歌うことを止めなかった。
伴奏もなにもない。
麻緋のアカペラ。
音に左右されない麻緋の真っ直ぐ芯の通った歌声。
月の光は麻緋を照らすスポットライトだった。
細くて白い腕を上下に揺らし、その動きに身を任せリズムをとるようだった。
波に負けないくらい響く麻緋の透き通る歌声。