汚レ唄
「……っなにその顔!!どうしたの??」
そ〜っと腫れた頬に手を差し伸べてくる。
俺は、その手をとっさによけた。
「たいしたことじゃないから」
「でも……」
行き場を失った彼女の白い手はそのまま彼女の膝の上に戻っていった。
今日も中峰と図書館デート。
昨日、麻緋がストリートミュージシャンとして歌を歌った。
そこで明らかに柄の悪い奴らに絡まれ、助けようとしたところ……
逆にコレだ。
まじで俺ダセー。
「はぁ〜……」
俺はそのまま頭を抱えて俯いた。
あのままだと麻緋はどうなってただろう。
運よく女の人が助けてくれたけど、助けられなかったら……考えただけでゾッとする。
守れなかった。
麻緋を、守ることができなかった。
自分の無力さが悔しかった。
「……私じゃ、なんの役にも立たないかもしれないけどさ、話聞くくらいならできるし……よかったら話してくんない?」
「……なにもない」
ただ、俺が無力なだけ。
「……どう見てもなにもないってことはないでしょ?」
中峰は少し頬を膨らませた。