汚レ唄
「っていうか中峰には関係ないし」
線を引きたいのに気付かずにズカズカと入ってこようとする。
確かに中峰は彼女だ。
俺たちは付き合ってる。
だから話が聞きたいのはわかる。
だけど無神経で、それが腹立つ。
一気に中峰に対する興味が消えた気がした。
俺はニッタァ〜と最高の笑顔を向けた。
「すぐに腫れもひくだろうし、気にしないでよ」
「でも……」
これ以上踏み込むなって言ってるの、何で気付かないかなぁ。
「中峰」
中峰は肩をビクッと揺らす。
「コレは俺の問題。お前に知って欲しいとも思わないし、言うつもりも全くない。
それでもお前は聞きたい?」
「でも……」
泣きそうな声をして上目遣いで見てくる。
ダメだ。
嫌いになりそう。
「中峰。
俺は聞いてほしくない話を無理に聞きだそうとする女って嫌い」
「蒼……く、ん?」
昨日、俺があの男たちから麻緋を守れたのなら、この腫れはきっと誰に聞かれても誇れるものになったと思う。
こんなに中峰を嫌になることもなかったと思う。
だけど、現実は……守れなかった。
俺は麻緋を守ることが出来なかった。
だから誰にも踏み込んでほしくない。
「俺と別れて?」
「え?」
中峰の目に溜まった涙が零れ落ちた。
「聞こえなかった?
俺、無神経な女すっげー嫌い。お前のこと好きになれそうにない」
「待って!!もう聞かないから!!
だから別れるなんて……」
俺の手に中峰の手が重なる。
その手はガタガタと震えている。
「あれ?なんで??おかしいなぁ……」
中峰はその震えを隠すように重ねた手を離した。