汚レ唄
頬に添えられた麻緋の手が気持ちよくて目を閉じた。
すると麻緋の歌う声が聴こえだした。
すっごい気持ちいい。
海の中、周りに人とかいなくて、1人でプカプカ浮いてるみたいな。
波で揺れているような。
そんな感じ。
よくわからないかもしれないけれどとっても気持ちいい。
頬に添えられた手に自分の手を重ねた。
すっぽり自分の手の中におさまる。
優しい歌声、あったかい手。
なんでか涙が溢れた。
プツっと歌声がやんだ。
だけどすぐに歌が始まった。
今度は俺を包み込むように柔らかい歌声になって。
ぐずっと鼻をすすって麻緋を見ると、麻緋は優しい眼差しで俺を見て歌っていた。
ドキッとする。
今までにないくらいの優しい表情。
それを俺に向けていた。
「……麻緋?」
「うん?」
多分、麻緋は泣いてる弟をあやしただけだと思う。
それだけの意味でしかないんだろう。
でも、聞いてみたくなったことが1つだけある。