汚レ唄
8畳ほどの畳の敷かれた部屋。
そのど真ん中で大の字になって寝転ぶのが大好き。
和室は静かで、畳の香りが落ち着く。
「日本人は和ですなぁ〜」
誰に言う事もなく呟いた。
車の通り過ぎる音。
家の前の幼稚園から聞こえる子供の声。
今は夏休み中だから、誰か遊んでるのかも。
犬の散歩中、ばったり知り合いに出会って挨拶してるような声。
瞳を閉じてそんな声を聞いてると、頭の中を蒼が支配する。
『もし、俺と麻緋が姉弟じゃなかったら、麻緋は俺と付き合える?』
はじめは何を言ってんだと思った。
だけど、正直なところ、蒼と血が繋がってなかったら、私は蒼と付き合えるのだろうか?
血が繋がってなかったとして、1人の男として……。
できるだけ考えるのはやめようと思った。
だけど、気がつくとその言葉が頭の中をぐるぐると回っている。
だから、癒しを求めて和室で寝転んでたんだけど、どうにもこうにも、やっぱり蒼が出てきた。
「……蒼のくせに」
「……俺が何?」
…………。
「いつからそこにいたの?」
「今だけど?」
ほらっと蒼はアイスを1つ手渡してきた。
「暑いだろ?」
蒼は肩に巻いたタオルで額から流れ落ちる汗を拭った。
「……ん。暑い」
私はアイスの袋を開け、口の中に突っ込んだ。
冷たい。