汚レ唄
「でも、アイス食べたら何でか喉渇くんだよなぁ。あれ、なんでだろうな」
「知らない」
さすがに殴られて何日もたっているので、腫れた頬は元に戻っていた。
そういえば、あれから歌ってないなぁ。
ぼんやりと窓の外を見ながら思っていたら、いきなり目の前に蒼の指が見えて、でこにデコピンされた。
「イタっ!!」
蒼を見るとなんとまぁ、意地悪な顔で微笑んでる。
「……なにすんのさ」
蒼と血が繋がってなかったら??
「デコピン♪」
血が繋がってなかったら??
「なんでデコピンすんの?」
姉弟じゃなかったら??
「アホ面だったから、つい」
絶対付き合わない。
「そんな暴力的だから中峰さんと別れるんだよ」
「そうかもね」
蒼は笑いながら隣に座りこんで、私と同じ景色を見た。
アイスが溶けそう。
「……麻緋?」
「うん?」
「頼みがあるんだけど」
「……うん」
蒼は真剣な眼差しでコチラを見てくる。
不覚にもドキっとした自分が情けない。
私には雅紀君という……別に付き合ってなかったけどさ。
雅紀君が帰ってくるのを待つ義務があるんだから。
だから、蒼がそんな真剣な顔してもときめいちゃダメなんだから。
「宿題手伝って?」
…………。
「自分でやれ」
「できないから言ってんのに。麻緋のバカ」
「今になっても宿題できてないあんたの方がバカでしょ?」
「はいはい、そうですねぇーだ」
「あぁ?」
「ケチ」