汚レ唄
バカみたい。
なんで蒼にときめいたんだろ。
本当、バカみたいじゃん。
「じゃあ、宿題がはかどるように歌、歌ってよ」
蒼は真っ直ぐ、コチラを射抜くように見ていた。
蒼も気付いたんだろうな。
歌うのが怖くなってるってことに。
歌おうとしたら、喉の奥が張り付いたようになって歌えなくなる。
オリジナル曲を作ってからストリートライブしようかなって蒼には言ったけど、本当は歌えないからだった。
「っていうか、歌ったら逆に勉強の妨げになるんじゃない?」
努めて冷静に。
普段通りに返事をする。
「全然?むしろ俺、音楽聴きながらじゃないと勉強はかどんないし」
「じゃあ、コンポで聞きなよ」
「麻緋の声はCDにもMDにもなってないじゃん」
「私の歌じゃなくてもいいんじゃない?」
「麻緋がいいの」
「無茶いわないで」
「なんで無茶なの?」
「とにかく歌わないんだから、さっさと自力で終わらせなさい」
ちぇ〜っと蒼はアイスを食べ終わり、立ち上がった。
「なんか悩んでるんだったら、歌ったほうが麻緋らしいと思うぞ?」
「は?」
歌えないことが悩みなんだよ。
それから、あんたの一言でも悩んでんだよ、こっちは。
蒼はそのまま何処かへ行ってしまった。
多分、自分の部屋に戻ったんだろうけど。