汚レ唄
どんどん前に進んでいく麻緋。
俺は、夢とか将来の計画だとかまだ考えてもなくて、中2なんだからまだ考えなくてもいいんだろうけど。
だけど麻緋においていかれる錯覚が起こる。
1人でどんどん前に歩いていく麻緋。
その後を走って追いかけても、麻緋は、きっと振り向いてくれないだろう。
俺という存在に気付きもしないだろう。
走って走って、麻緋と対等に並ばないと麻緋には気付かれないんだろうな。
……歌声がやんだ。
「麻緋?」
ドア越しに声をかけてからドアを開けると、麻緋はコチラをみて微笑んだ。
「どうしたの?歌、邪魔だった?」
「まさか」
あれ?俺、なんで麻緋の部屋に来たんだっけ?
「本当?」
「うん。あのさ……」
麻緋に歌えるようになったんだなって言いに来たんだ。
だけど、歌声をきいたんだから、歌えるようになったのは分かってるし、なんでそれをわざわざ言いに来たのかわからない。
「何?」
「……オリジナル曲できた?」
麻緋はニパっと笑顔になると、俺をベッドの端に座らせた。
「曲はまだなんだけど、イメージというかこんな感じにしようっていうのがあるんだよね」
「……ふ〜ん」
「なんか歌う前に自己紹介を兼ねたちょっとした曲を弾いてみようと思うの。
んで、言うならばオープニング曲と同じ曲調で歌詞だけ変えたエンディング曲を作ってみようと思うわけ」
「ふ〜ん」