汚レ唄
「麻緋?」
「蒼……」
部屋に戻ろうとしていたら部活帰りの蒼に声をかけられた。
「また?」
蒼は私の顔をみるなり全てがわかったように溜息をついた。
「俺も言ってやるよ。麻緋の歌は凄いんだって言ってやるから」
蒼は部活帰りで疲れてるはずなのに。
私の頭に手をのせてポンポンして優しい瞳でコチラをみた。
蒼のこういうところ好き。
「いいの、自分で説得させたいから」
これ以上は蒼に甘えられない。
頭に乗せられた大きな手をよけた。
「無理すんなよ」
蒼はそれだけ言うと、部屋に入った。
頭ごなしに反対されて落ち込んでたのに、今はまた頑張れそうな気がする。
頭に乗せられた蒼の大きな手を思い出して、自分で頭を撫でた。
なんか嬉しい。
へへへ♪
って蒼は弟なんだから、こんな気持ち持っちゃダメなんだから。
危ない危ない。
最近、蒼のこと弟だって忘れかけてしまう。
弟に恋をするなんて異常なことなんだと自分に言い聞かせなくちゃ、自分の感情をコントロールできない。
「にしても……どうしたもんかなぁ〜。進路」
自分の部屋に戻ってギターを手にしてみる。
こんなモヤモヤしたときは歌うに限る!
『ジャカジャーン……ジャカジャーン……』
「♪〜」
右足でリズムをとる。
自然に体が左右に揺れる。
高1からの2年間でオリジナルソングが結構たまった。
色んな種類の歌をためた。
曲を作るのは難しくて、サビは重要だから真剣に考えるんだけど、考えれば考えるほど頭がこんがらがってくる。
だけど、ある程度メロディが決まれば、あとは流れに身を任せてみるとビックリ1曲出来上がり。なんて場合もある。
そんなこんなで自作の曲で、激しくてスッキリする曲を歌い始める。