汚レ唄
「麻緋は、歌が大好きなんだ。歌うことが大好きで、心の底から楽しんでるんだ。
母さんが将来の保障が欲しいっていうなら、俺が保障してやる。
麻緋は、あいつは近い将来、絶対にプロになる。
あいつはプロになれるんだよ。
だから、今、できることは音楽を勉強させて可能性を広げてやることなんだ。今よりももっと力をつけさせることなんだ」
「蒼、あの子は普通の子なのよ?
私とお父さんの子なの。そんな平凡で普通な子がプロになれるわけないわ。それは家族の欲目じゃない?」
「……母さん」
蒼がそんな風に思っていたなんて。
蒼が私のことそんな風に考えていてくれてたなんて。
充分だよ。
私、蒼がいてくれたら、それだけで頑張れるから。
「蒼?もういいよ」
「麻緋」
蒼は振り返って私を見る。
その姿は、さっき帰ってきたばっかりの姿だった。
帰ってきて、疲れてるだろうに、私のために説得してくれてるんだ。