汚レ唄
「蒼……お母さんの説得は自分でするよ。だから蒼は傍で、頑張れって言ってて。それだけで本当に頑張れるから」
「麻緋、ゴメン。俺、母さんにも麻緋の凄さ、わかって欲しかったんだけど……」
「うん。ありがとね、蒼」
お母さんの方を見ると肩に提げたギターケースを見ていた。
「あんた、また行くの?」
「……うん。行く」
「恥ずかしいから辞めなさいっていったはずよ?」
「でも、これがないと私は……きっと……おかしくなるから」
歌がないと気が狂ってしまうから。
私じゃなくなるから。
「どうしても音楽がいいの?」
「音楽以外は考えられない。
でも、お母さんが辞めろっていうのなら、私、自分で稼いで専門学校通うことにする。
いつになるかわからないけど、卒業したらバイトしてお金貯めて、それで学校に行くよ。
そうすればお母さんの了承得なくてもいいんでしょ?」
「そう……勝手になさい」
「うん」
静寂な空気が私たちを包み込む。
でも、いいんだ。自分のしたいこと、それができるならお母さんには悪いけど、これでいい。