汚レ唄
「麻緋、もう行くのか?いつもより早くない?」
その静寂を破ったのは蒼だ。
「ちょっと早めに行ってブラブラしてようかなって思って。歌はいつもの時間に始めるつもりだから」
「そっか。じゃあ、俺、シャワーしてから行くことにするから先に行ってて」
「うん」
また蒼を巻き込むのかと言いたげなお母さんを無視してそのまま家を出た。
これでいいんだ。
わかってもらえないならしょうがない。
そのまま電車に乗って駅前の本屋に立ち寄った。
目的があったわけじゃないけど、なんとなくプロの人たちはこういう親の反対もあっただろうし、それでも成功してテレビにでてる。
それって本当に凄いことだと思って、なんだか本当に尊敬して、音楽の雑誌をパラパラとめくったのだ。
ふとピアノの楽譜の載った月刊誌の表紙に見知った名前が書かれていることに気づいた。