汚レ唄



店のドアに『本日は終了しました』の札をかけた。



母さんの仕度に時間がかかって、歌を始める時間に少しだけ遅れてしまいそうだ。



電車から降りて、少し暗いロータリー。



少し歩いたところに電話ボックスが3台並んだところ。



そこは少し人が集まって麻緋を囲むようになっている。




「……あれだよ」




観客も立って聴いているため麻緋が隠れて見えない。


だけど声は麻緋の声だ。


「少なくても、麻緋は、あの人たちの希望になってると思う」



そこにはとても楽しそうにリズムをとる人たちで溢れていた。


麻緋の歌声は少し離れた場所で聞いている俺たちにも届いてくる。



母さんのほうをみると、多分思っていたより盛り上がっているからビックリして口をあけている。



「……すご、い」





初めて口から漏れる言葉がそれだった。





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