汚レ唄
「あの……大丈夫??」
人のよさそうなおばさんが声をかけてくれる。
だけど、そんな声ですら遠くに感じた。
“大丈夫です”
そう言いたいのに、口が動かない。
「ちょっと??顔真っ青じゃない!!大丈夫??ねぇ??」
腰から崩れ落ちる。
立っていられない。
「ちょっと?!あなた??」
おばさんに肩を揺すぶられて、やっと意識がこっちに戻ってきた。
大丈夫。
話し方も、心臓も大丈夫。
まだ黒の世界が支配するけど大丈夫。
大丈夫。
「………あ…すいません」
背中をさすってくれているおばさんに声をかける。
おばさんは、こちらを見て、
「大丈夫なの?」
と親切にしてくれた。
「あ、はい……大丈夫です」
私はゆっくり立ち上がるとおばさんに一礼をする。
もう2人の姿は見えない。