汚レ唄
蒼は、本当に髪をいじるのが好きだったのかもしれない。
私は蒼の何をみていたんだろう。
こんなに楽しそうに髪を触る蒼は、何処からどう見ても親の犠牲でも何でもない。
自分で決めた道だったんだ。
私が変に考えすぎていただけなんだ。
「最後は……麻緋ね」
手を差し出されて、思わず、自分の手を重ねる。
一つに束ねた髪をほどかれ、丁寧に髪にクシを通してくれる。
確かに気持ちいい。
「蒼……、ごめんね」
ごめんって言いたかった言葉だけど、いざ、本人を前にして謝るのは恥ずかしくて、本当に小さな小さな声で呟いた。
「俺も悪かったし」
それでも蒼はちゃんと聞き取ってくれる。
聞き返したりはしないんだ。
だから、そのまま素直になれるんだ。