汚レ唄



「大丈夫っすよ?」


拓斗がタオルを肩にかけて頷くと、ちょっと来てくんない?と先生に呼び出しを食らってしまったのだ。




「……1曲多くやってしまったから?」

「そんな事で怒る?」


「あとあと響くとかあるんじゃね?」



などと推測を交わしながらやってきたのは広い会議室だった。


ライブ会場は何度か利用してきたけど、ここに入るのははじめてだった。


中には白髪の入ったふくよかな中年のおじさんと、先生たちだ。



おじさんは見覚えのない人だけど、着ているスーツはツヤがあって、高級なんだろうなぁと分かるほどだ。



長い簡易机にパイプ椅子が人数分用意されていた。


戸惑っていると、白髪交じりのおじさんが目を三日月のように細めて穏やかに微笑んだ。



優しいお金持ちのおじさんってかんじだ。




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