汚レ唄
リビングにある雨の日用の小さな洗濯物干し台に、冷たく塗れた服をハンガーにかけて干す。
お父さんの大きな服、
お母さんのいつも着ている服。
お兄ちゃんの今日着ていた服。
私の服。
特にお兄ちゃんの服だけは慎重に、シワのないようにピッチリと干した。
綺麗に綺麗に乾きますように。
それで、またお兄ちゃんに褒めてもらうんだ。
『こんなに綺麗にできたんだ。凄いな』って。
単純でしょ?
あんなに『不幸背負ってます』
ってくらい凹んでたくせに、お兄ちゃんに褒められた途端、不幸なんてもの全部吹っ飛んで幸せにキラキラ世界が輝くの。
お兄ちゃんに笑いかけてもらっただけで、何でも出来る気がするの。
バカみたいでしょ?
あんなに兄妹が嫌だったのに、お兄ちゃんといつもより話せただけで兄妹でもいいなって思ってしまうの。
……だけど、やっぱりダメだった。
幸せなんて長く続かない。
続くことなんてないこと、私は知ってたくせに。
わかってたのに、幸せすぎて忘れてた。