汚レ唄
心の中は真っ暗で、もう何も考えられなかった。
ただわかるのは、お兄ちゃんは私よりもあの人を選んだ。
それだけだった。
今はただ、二人、隣りあわせで布団を合わせ、手を繋いで寝ていた頃が懐かしかった。
なんだか、空っぽなまま、リビングを出て、階段を上って自分の部屋へと移動した。
……もうすぐ1時だ。
早く寝よう。
真っ暗でこの広い家に1人しかいないこと、忘れてしまいたかった。
寝て起きたら、次は明るい日差しが見れるでしょ?
だから早く寝てしまいたかった。
『パチ』
部屋の電気をつけて自分の部屋を見渡す。
無造作に置かれたカバン。
ハンガーにかけることを忘れ、ベッドの上に散らかった制服。
窓からは雨が打ちつけられる音が聞こえ出し、
『今、雨が降っているんだ』とぼんやりと思った。
「お兄ちゃん、傘持って行ったかな」
こんな時にまでお兄ちゃんの心配をしてしまう自分が痛い。
制服をハンガーにかけ、携帯を机の上に置いて、椅子に座った。