汚レ唄



そして、引き出しから四角いクッキーの缶を出す。


元は、クッキーが入ってた缶だけど、今では私の大事なものがここには入っていた。



大事なもの。


それは真っ赤なお守りだった。


少し、ぶきっちょな形をしたお守り。


いびつに淵を縫って、お守りの真ん中に大きく『守』と刺繍されたお守り。



高校受験のときに、お兄ちゃんが作ってくれた受験のお守りだ。


お守りの中には分厚い紙が入っていて、マジックで『合格』と書かれたお守り。






これが私の一番の宝物。


これを見るとなんだか落ち着く。


それから、缶の中には昔、遊んでいた人形の服があった。


これもお兄ちゃんが作ってくれたもの。


いっつも飽きずに遊んでいた人形に合わせて、靴下に顔を出すところ、手足を出すところに穴を開けた全身タイツのようで……お世辞にも可愛いとは言えない洋服。




ダサい服だったけど、作ってくれたことが本当に嬉しかったんだ。




喜んでもらおうと思ってくれたことが……嬉しかったんだ。





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