汚レ唄
机の上のペン立てに立っているカッターナイフが目に入った。
──この血さえなければ、私はお兄ちゃんに見てもらえる。
──私の元に帰ってきてくれる。
缶を引き出しに戻すと、カッターを手に取り、ベッドの上に座った。
ザーザーと窓に打ち付ける音が耳障りに感じる。
──この血さえなければ……
──私は女としてみてもらえる
1人の夜はもう嫌だ。
暗い暗い、底の見えない闇が襲ってくるから。
怖いんだ。
どうしようもないくらいに怖いんだ。