数学?ううん、先生。



「……やめよ…」


泣くのは。


こんなことで泣くなんて可笑しい


別に私が泣くことでもないし…



そう思ったけど
涙は次々と頬を伝って行く


「…ぅ…やめ、る…泣か…ない」


「…く…っ…せんせ…い…ひっ」



私は無意識に今日先生にもらった紙を握り締めていた


そしてぼやける視界の中で
おぼつかない手つきでアドレスを入力した


カチッカチカチ

―――――――――


先生

先生の声聴きたいよ…


―――――――――


“送信しました”



「迷惑メールじゃん…こんなん」


私はベッドに座って
携帯を放り投げた


ヴーヴーヴー


手から離したばかりのそれは
突然震えた


「え…先生?」

ディスプレイには
大好きな先生の名前


私は震える指で
真ん中のボタンを押した


―――――――


小林さんか?

どうした?
電話して

0902536####

――――――――



「嘘…」


余計に涙が滲んだ


私は迷うことなく数字をプッシュした


2回のコール音


『…もしもし?』


先生の、低い声


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