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無言で軍刀を抜く時雨。

ラルフもまたアサルトライフルの安全装置を解除して、いつでも発砲できる状態にする。

『近づくぞ。物音を立てるな』

ハンドシグナルで無言のままラルフに合図を送る時雨。

それにラルフも頷く。

ここから先は不用意に声を出さない方がいい。

こちらの存在に気づかれれば、AOKの勢力下である分、圧倒的に不利だ。

極力足音も立てないように、二人は慎重に山中を歩く。

僅か数メートルを進むのにも、臆病なほどに時間をかけて。

戦闘になればその音でAOKが集まってくる。

こちらはたった二人しかいないのだ。

できる事ならば戦闘は避けて速やかに任務を遂行後、この場から撤収したかった。

…やがて鬱蒼とした茂みを踏み分けて、二人は先にひらけたスペースがある事に気づく。

『止まれ、しゃがんでこの場で待機』

再びハンドシグナルで伝え、時雨は注意深く茂みの向こうの様子を窺う。

「……っ!」

そこで見たものは、戦慄の光景だった。

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