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「ちっ…」

皓が拳を引く。

「そんな事言われちゃ…殴れないじゃないか…」

悔しげに呟く皓を見つめ、米内は再び目を細めた。

「やはりいい兵士を育てた…時雨は指導者としても一流だったようだな」

「あの…」

ラルフが控えめに言う。

「米内司令、ここには一体どのようなご用件で…」

「うむ…勿論時雨の容態も気がかりだったのだがな」

米内は隊員達を見渡した。

「本日付をもって、第207訓練分隊は正式に横須賀基地の正規部隊に昇格する事になった。これにより、諸君ら訓練兵は本日より任官、君達五名は、少尉の階級を与えられる。その事を知らせておこうと思ってな」

「本日付ですかっ?」

奈々が目を丸くして驚いた。

…基地防衛戦で、訓練分隊は訓練兵とは思えないほどの目覚ましい活躍を見せ、見事AOKの大規模群を殲滅した。

本来なら訓練期間はあと二ヶ月、更に任官試験があるのだが、実戦での有能さ、加えて時雨の戦線離脱もあり、今回の戦時特例による任官と相成ったのだ。

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