alternative
時雨は皓の怒声など意にも介さず、まじまじと彼を見つめた。

「お前、親は」

「いない!俺達は子供だけで暮らしているんだ!」

「ならば施設を手配してやろう。盗賊などせずとも…」

「うるせぇ!施設なんて行ってやるもんか!子供まで戦争に駆り出す兵隊の世話にもならねぇ!俺達は子供だけで生き延びてやる!」

青臭い正義感、思春期特有の大人への反抗。

しかし。

(成程…耳が痛いな…)

『子供まで戦争に駆り出す兵隊』

その言葉に時雨は苦笑いすら浮かべる。

「何が可笑しい!」

嘲笑されたと思ったのか。

皓はますますムキになる。

柔らかな色素の薄い髪が、彼が前のめりになって怒鳴る度に大きく揺れた。

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