alternative
両腕まで完全に縛られた時雨。

だが手首は動かせる。

それだけでいい。

彼女は左腰に下げた軍刀を一寸ばかり抜く。

それだけでよかった。

僅かに抜かれた軍刀の鍔元(刀の根元の部分)が、緊迫した縄に触れた途端。

「!!」

縄は切断され、時雨は体の自由を取り戻した。

「なっ…」

言葉を失う皓。

刀の刀身で最も切れ味が鈍いといわれる鍔元でさえこの切断力。

実際に斬られたらどれ程の切れ味なのか。

「さぁ…続けようか」

促す時雨に。

「もういい、参った」

皓はその場に足を組んで座った。

「そんなすげぇ刀持ってんじゃ、たとえ俺がナイフ抜いたって敵わねぇよ」

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