alternative
入隊早々の洗礼。

新兵達は右も左もわからない『軍隊』という世界の中で、ただひたすらに狼狽するばかりだ。

「…まぁいい。今回は大目に見よう。貴様らも昨日までは一般市民だったのだ。無知なのも仕方ないと言えば仕方ないからな」

彼女は溜息を一つつき、新兵達の前に立った。

「今日から貴様ら新兵達の教官を務める時雨・テスタロッサ・タチバナ少佐だ。貴様らは国連軍第207訓練分隊の隊員でもあるから、私はその分隊長という事にもなる」

教官であり、分隊長。

普段聞き慣れない単語が、ますます新兵達に『軍に入隊した』という事実を突きつける。

「貴様らはどこまで徴兵制というものを理解しているか知らないが…今現在世界が『地球外起源種』…AOKによって侵略行為を受けている事くらいは知っているだろう。徴兵制はその侵略行為に対抗する為に、兵を招集する制度だ。貴様らには『御国の為に』その命を捧げる覚悟で戦ってもらう」

『御国の為に』

かつて太平洋戦争で日本がアメリカと戦っていた頃、そんな言葉が頻繁に使われた。

御国の為、天皇陛下の為。

その馬鹿げた思想の為に、一体何万人の若い命が散っていったのか。

この国はまた、その馬鹿げた思想をどこからか掘り返してきたのだ。

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