alternative
泣きじゃくる奈々の前に、時雨がしゃがむ。

「……っ!」

また怒鳴られる。

思わずビクリと体を震わせる奈々。

だが。

「なぁ、香月」

意外な事に、時雨の声は今まで聞いた事もないような穏やかさだった。

「お前が普通の女の子で、恋愛やオシャレに興味がある、普通の17歳である事は、私だってこの場にいる者達だって、全員理解している。他の連中だってそうだ。本当は戦場になんて立ちたくない。死んでしまうかもしれないのだからな。誰だって戦争なんてしたくないに決まっている」

時雨の温かい手が、奈々の肩に置かれる。

「だが…今は恋愛やオシャレに興じている時ではない。この世界は、侵略されつつあるのだ。誰かがAOKを滅ぼさなければ、恋愛やオシャレをする平和な日々すら失われる。満足に生きていく事さえ出来なくなってしまうのだ」

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