alternative
「ええいっ!」

か細い、しかし勇気を振り絞った奈々の声。

後方から走り込んできた奈々の軍刀が、AOKの頭部に叩き込まれた!

彼女の力では両断とはいかなかったが、それでもAOKの頭部に傷を負わせ、昏倒させる。

「よくやった!」

ラルフはその隙に銃剣でAOKの腹を引き裂く!

更なる鮮血が、血の雨の如く周囲を赤く染め上げる。

最後のAOKもまた、無惨な姿で絶命したのである。

戦闘終了。

その場にいた兵士達は皆、困憊の表情で呼吸を乱す。

「っっ…」

軍刀を両手で握り締めたまま、ガチガチと震える奈々の手を。

「香月」

時雨が片手で押さえた。

「もういいぞ。落ち着け。戦闘は終わったんだ」

…こうして、第207訓練分隊の初陣は終わった。

分隊の死傷者数はゼロ。

しかし機甲科偵察部隊の兵士が数名、AOKの分泌物によって殺害された。

開戦以来のAOKとの戦闘では、最も戦死者数の少ないものではある。

が、死んだ事には変わりない。

その事を。

「……」

身近な者を失った経験もなく、『死』に最も免疫のない晴はどう感じていたのか。

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