君の声を聴かせて
「声がね…、似てたの。」


「声?それって俺の声が?誰に?」


「………“鳴海キョウ”っていう声優さん。」



チラリと蓮沼くんの顔を見て、私は話を続けた。


「昨日家帰ったら、妹がアニメ観てたんだけどね。観たいテレビもなかったから、なんとなく観るっていうか…聞き流してたの。話の中では、役名なんかないエキストラみたいた感じだったんだけど、私の中では、主役っていっていいくらい。
その人のたったひとつのセリフがずっと耳に残ってるの。今も彼の声を思い出すと、ドキドキしちゃう…。」


「………。」



なんにも言わない蓮沼くん。
ただ黙って、私の話を聴いててくれる。

そうじゃなくって、“いい歳してアニメなんか観て”って思ってひいてるとか?


なんか言ってよ…。



「幸せ者だね。」


「え?」
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