君の声を聴かせて
『姫様は、我々の希望の星なのです。』




たった一言。


話の中では、聞き逃されてもおかしくない。


主人公のお姫様が立ち寄った村でのワンシーン。

たくさんの村人が、お姫様に感謝の言葉を言っている。

名前なんかない。

村人AとかBとか、いてもいないような役。
もしかしたら、AもBもついてないかもしれない。



それなのに。


彼の声は、私にとっては主人公なくらい耳に残ってしまった。



独特の低い声。
子どもでもない。
かといって、大人の男性でもない。
彼にしか出せない、低いビターな中に、程よくそしてすっきりとした甘みがある声。


こんな陳腐な言葉では表現しきれない。


国語教師がきいてあきれるわ。



まさに、


一目惚れならぬ、


“一聴き惚れ”
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