君に永遠の初恋を。
「…俺、そろそろ帰る」

「帰る所、ないのにどこへ?」

「は?何で知って…」

俺、誰にも言ってないはずだけど。

エスパー?超能力?

…一ノ瀬ならありえそうな気がする。

謎だらけだからな。

こんな高級マンションに何で一人暮らししてるのかとか。

家族はいるのか、どうして大学課程終わってるのか…知らないことばかり。

でも、それを聞いたら、一ノ瀬が俺の前からいなくなってしまいそうで。

何か踏み込んではいけない気がした。

「雰囲気が沈んでる。ちょっと、待ってて」

そう言ってどこかへ電話をかけ始めた一ノ瀬は二言程話した後、パチンと携帯を閉じた。

「隣りの部屋、住めば」

「はっ!?」

ここは超高級マンションだぞ?

しかも最上階。

空きまくりのボロアパートじゃないんだし、月何百万の規模だろ!?

「お金ならご心配なく。ここの大家私だから」

「大家!?」

「一応。管理会社にも了承得たし、どうせ空いてたから、気にしないで」

平然と凄いことを言ってのけた一ノ瀬にしばし呆然としてしまった。

また、一ノ瀬の秘密が増えた。

「…いいのかよ?俺は泥棒だぞ。いつ、盗んで逃げるかわからないのに」

「逃げたければ逃げればいい。私は住む場所を提供するだけ」

…この無気力さに俺はこれから何度救われるだろうか。
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