君に永遠の初恋を。
君に永遠の初恋を。

文化祭

「…あ!一ノ瀬!」

部屋に帰ってくるなり、飛んできた江川朔夜は忠犬八チ公みたいだった。

そんなに、心配させていたつもりはないのだけれど。

妙に勘が鋭いところも、犬そっくりで、可愛いと思ってしまった。

「俺、飯作ってみたんだけど、味見する?」

「…手作り?」

「もちろん」

手作りなんて、食べたことあっただろうか。

不安そうに見てくる江川朔夜に小さく頷いた。

テーブルの上に置かれたのは、お世辞にもおいしそうとは言えないオムライス。

卵が殻ごと入っているような…

「…ごめん。どうしても綺麗に割れなくて」

「…いただきます」

一口食べただけでわかってしまった。

殻、入り過ぎだ。

…でも。

誰かの作ったものを食べれるだけで、嬉しい。

殻さえ取れば、普通においしいし。

練習すれば上手くなるに違いない。

「…ありがとう。とっても、おいしい」

「失敗したのに?」

「うん。今まで食べたものの中で一番」

こんなに味のあるご飯は久しぶりで、また泣いてしまいそうになる。

…泣いてはいけない。

すべてわかってしまうから。
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