君に永遠の初恋を。
そして、とうとうやってきた文化祭当日。

この忙しい時にサボるのはさすがに申し訳ないので、朝からキッチンを走り回っている。

メイドがいるカフェというだけで、こんなに客がくるとは。

私が考えたパフェはあっという間に売り切れて、何だか嬉しかった。

「一ノ瀬さんおつかれー!そろそろ午後の子たちくるから上がっていーよ」

学級委員長に言われ、ちょうどやってきた午後の子にエプロンを渡す。

さて、帰りますか。

これだけ盛り上がっているなら、後夜祭にいなくても気付かれないだろう。

カバンを持って教室を出ようとした。

「…帰るのか?」

どうして、声が震えている?

江川朔夜は教室の扉にもたれかかっていた。

本当、鋭い。

「私の役割は終わった。だから、帰る。正当な理由だと思うけれど?」

嘘をつくのは慣れている。

たくさんの人を欺き、蔑む。

これが私にかせられた使命。

「家に帰ったら、夕飯作って待っててくれるか?」

「…もちろん。今日はハンバーグなんてどう?」

もう、タイムリミットは近い。

偽りの自由でいられるのはあと、2時間。

「…じゃ、私、帰るから」

…元いた、あの闇に。

そう、戻るだけ。

何も言わない江川朔夜を置いて、歩き出す。

二度と交わることのない運命に心が泣いている。

あと、少しだから、我慢して。

ギュッと手を握り、私は走り出した。
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