君に永遠の初恋を。
「続いてのニュースです。日本の文学賞を総なめにした一ノ瀬結愛さん著、[朔月]が本日発売されました。一ノ瀬さんは、ある人の為に書いたとコメントしています…」

心臓が、止まるかと思った。

でも、次の瞬間には、ちゃっかり財布を持って家を飛び出していた。

一ノ瀬結愛。

同姓同名かもしれない。

けれど、走り出さずにはいかなかった。

一番近い本屋に飛び込むと、[朔月]は最後の一冊になっていた。

慌てて本を掴み、レジに向かった。

「ありがとうございましたー」

店員の声を最後まで聞かないうちに俺は本屋を出た。

紺色のカバーには、題名通り朔月が浮かんでいる。

早く読みたくて、「あの」喫茶店に入った。

…そう、一ノ瀬が消えた、喫茶店。

俺はあの日から、ここの常連になっていた。

…一ノ瀬がいる気がして。
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