ボーダーライン
「何で私がそんな事…」



そう言いかけた時…耳を疑う言葉を奥さんが発した。



『あなた愛人だったんでしょ?!』



私は凍り付いた。


でも次の瞬間…私の体は完全に怒りで震えていた。



追い討ちをかけるかの様に


『愛人だったくせに…線香の一本くらいあげに来なさいよ!!』


奥さんの怒鳴り声が携帯越しに響いた。



私以上に怒りで震えていたのは奥さんの方かもしれない。



電話の向こうでヒクッヒクッと泣き始めた。


(……可哀想な人。)



「線香をあげに行くつもりはありません。失礼します。」



そう冷静に告げると私は電話を切った。
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