おさななじみ
「兄貴、今日は何が食べたい?」
「あぁ、昨日お隣さんがサンマくれた。スーパーで安かったんだと」
「じゃあ今日はそれを焼くから」
別に恋人でも夫婦でもなく、兄弟だ。
両親亡くなった今、どちらも高校生で、家事もしなければと言ったら分担するほかないだろう。
放課後、部活が終わってすっかり暗くなった道をスーパーめざして歩いていた道を途中変更。
スーパーよりも近い家路に向かって自転車のペダルを踏んだ。
すっかり木の葉も落ち、寒々しい道の脇。
日が暮れればさらに寒い。
神主の奥さんがくれたマフラーは手放せないな、と小さく乾いた笑い声をもらした。
「あれ、寒くないかな」
「あ?」
のろのろと自転車を前に進めていれば、隣で献立を考える弟から、いつもでは見られぬ違和感を指摘される。
よくワイドショーとかで見る芸能人の家みたいな家の門の前に人が立っていた。
自分達はマフラーなしではいられないというのに、その人は上着もなしにただ門の前で誰かを待っているようだった。
他人にはあんまり干渉しない、
以前大分痛い目にあったからいつもそれを気に掛けている。
寒そうなのはよく分かるけど自分には何もできない。
それよりも今日の夕飯が楽しみだ。