スキャンダルなアイツ-プレイボーイに気に入られたのは毒舌地味子-
それに……、
「桂木悠人!?」
そう、若者でも楽しめるような
学生ものから特殊業界を舞台にしたミステリーなどを幅広く扱う、
私もこの春の孤独感を紛らわすために読んでいた本の中で
かなり好きだった作品を書いている作家さんだ。
水野くんは私と稜佑の言葉に頷きで返事をした。
私はつい嬉しくなって
彼にもっと話を振る。
「水野くんの読んでるやつは彼の新作?
私も桂木悠人好きなんだけど、
彼の作品で読んだのは兄のおさがりの本だから新作読んでないんだ」
「……新作」
水野くんは今度は声で返事をしてくれる。
「ふーん、山田さんお兄ちゃんいるんだ」
稜佑の声が間に挟まれる。
今はいいわよ、その話題は
という念を込めて視線を送ると
眉をあげて軽く頷いた。
「そっか、新作が出てるんだー
私も読んでみよう!」
この間新しく買って今読んでいる本は
学生の青春ものみたいな、女性作家の作品だから
次はまたミステリーを読みたいと思ってたんだよね。
私の意思表示の言葉には
水野くんの反応はなく、
本当に本のこと以外は会話の反応がないみたいだ。
んー、どうしたらもっと打ち解けられるかな。
考えてもなかなか次につなげるような話題が思いつかない。
向こうからこないならこっちから食いつくしかないもんなー。
そう考えていると先に稜佑が話題を振ってきた。
「水野は本読むのが好きなん?」
彼はそれに1回縦に首を振る。
そうか、私みたいに時間つぶし用としてじゃなくて本当に好きなんだな。
まあ私ももう本当に好きってそろそろ言ってもいいと思うけど……。
なんて2人の会話に入らずに聞いていると
「……友達とかは作んねーの?」