やどぬし様
季節外れの彼岸花
プロローグ
暗い倉庫のような所だ。
さまざまな積み荷らしきモノがそこらに置いてある。
その陰から一つの人影がぬっと起きだした。
実はここは飛行機内の貨物室なのだが、彼の服装は袖なしにジーパンという格好で、どう見てもこの場に相応しくない格好だった。
そんな彼の手には球根が入った木箱があった。
彼は近くの非常用ハッチを開け、そこから球根の入った木箱を投げた。木箱は投げたと同時に引っ繰り返り、中に入っていた球根は空中でバラバラになって落ちてゆく。
そのようすを見届けた彼はしばらく地上を見下ろしていた。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
突然、ドアが大きな音を発する。
どうやら、ハッチを開けたことによる異変に乗務員が気付いたようだ。
「中に誰かいるのか!オイ、出てこい!」
彼は慌てた。隠れる場所はあるが隠れたとしてもすぐに見つかるだろう。
それなら…
彼は覚悟を決め、開けたハッチからその身を投げ出した。
それと同時にドアが開き乗務員が二人ほど入ってくる。
「誰かいるのか!」
だが、その場からはすでに誰もいなくなっていた。