やどぬし様
「実は頼みたいことがあるのですよ」

「俺に頼み?」

「はい!」

面倒臭そうな顔で少女の笑顔と対峙する。その笑顔を向けられると目が痛い。

つか頼みってなんだよ?金か?いや、さすがにそれはないか。だとすると、こいつは植物だから肥料か?「あ、でもそれはその辺に落ちてるし違うか。まさか家まで送ってくれなんて言うんじゃねぇだろうな?原付きの免許は持ってるがもし県外だと面倒だな…。う〜む」

と腕を組んで真剣に悩む。

「あ、あの〜、途中から聞こえてますですよ?というか落ちてるって何がですかぁ?」

「そりゃ犬のフ…、い、いや、なんでもない!とと、とにかく頼みってなんだよ!?」

苦しい逃げ方だった。だが少女は対して気にもしてなく、満開の笑顔のままその場で土下座の姿になった。少女の紅い瞳が真っすぐ見つめる。

そして意味のわからないこと言いだした。


「私の“やどぬし”になって下さい!」


……………………………………………………………は?

コイツ今なんて言った?

もはやキョトンとするしかない。なにしろ意味がわからなかったから。

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