やどぬし様

やどぬし…、やどぬし…、やどぬしってなんだよ…?

申した本人に聞けば良いのだが、思い付かず一人で考えてしまう。
一人暮らしを始めてから人に頼るということを忘れかけているのだった。

やどぬし…、やどぬし…、ヤドヌシ…、やど…ぬし…、宿…主………

……宿主?

宿主…[意味=宿の主人、シュクシュとも読む]

多少意味は違うと思うが、つまり暮らす場所をくれってことか?つか、それ以外に思い浮かばない。

「う〜ん、まぁ良んじゃねぇの」

一人暮らしも淋しいと思っていたし、それにこんなガキと暮らして欲情するほどロリコンではない。
そんな考えの軽い返事をする。

「ホントですかぁ!」

少女が笑顔のまま抱き着いて来た。
ツカサは一瞬後退りするが少女が顔をツカサの胸に押し付けていて離れることが出来なかった。よほど嬉しかったのだろう。

白い髪がツカサの顔を撫でる。その髪からは甘い香りが漂ってくる。

「ありがとうございます!」

「気にするな。つか暑いから離れろ」

「了解です」

ビシッと兵隊のように手を額の辺りで構える。言われた通り少女は離れた。

こんな暑い日によく抱き着いてくるな、とぼやきながら少女に背を向け寝転がる。

話はだいたいわかったのでこちらから打ち切った。ようするにコイツは植物で住む場所がないからここに置いてくれというだけのことだ。

まだ昼前くらいでなにもやることがない。普段なら4時限目の途中だった。

この時、少女の長い一束の髪がゆらゆら動き出した。

そして……

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