やどぬし様
突然の同居人
梅雨の時期だというのに雲一つない空。晴天という言葉がよく似合う清々しい天気だった。
ツカサはそんな空を眺めながら午後の授業を適当に受けていた。
ここは都内より外れた位置にあるどこにでもありそうな田舎町で、ツカサはそんな町へ両親を無理に説得し、アパートを借りて家族とは離れた県外で一人暮らしをしている。
何故わざわざ県外にまで出たのかというと、ちょっと口では言えないぐらいの問題を起こしたからで。都内にいるといろいろ面倒なのでこのような田舎町にしたのだ。
…とは言え、学校を適当に選んだのは間違いだった。
入学したのは農林学校で、机に付いて勉学というよりも、畑や山などに行って実習ということが多い。
そして今は貴重な机に付いて勉学をする科目だ。
ツカサは青色が果てしなく続く空を見ていた。
不意に前の席に座る宮岡(通称:ミヤオ)からタマネギのようなモノが俺の机に置かれる。
「なんだよこれ?」
突然置かれたタマネギのようなモノを手で持ち上げミヤオに尋ねた。
「ツサカ…、少しは授業に集中しろよ」
あきれた顔に苦笑を浮かべながらミヤオは前の黒板を指差す。
あるほど、そういうことか。
前の黒板には【球根の発芽と栄養】と、先生の字で大きく書かれていた。
ようするに、球根とはこんなものですよぉ、と先生なりの配慮で配ったようだ。
キンコンカンコーン…
このとき授業終了のチャイムがなった。
他のクラスメイトは自分の持っていた球根を教卓の上に戻しに行く。
「………」
(教卓まで行くのダリィ…)
そのままポケットに球根を突っ込み、また空を見上げた。