やどぬし様
ツカサがアパートに着く頃にはすっかり日は傾いていた。
ツカサの部屋は203号室。日当たりは良いが風通しが悪く、これから来る夏は地獄のような季節だ。
扉を開く。当然だが、一人暮らしなので誰も出迎えてはくれない。あるモノと言えばテレビとテーブルと冷蔵庫と布団ぐらいだ。電話はケータイがあるので関係ない。
少しだけ淋しさを感じる部屋の窓から夕日が差し込んでいた。
無言で窓を開け、少しでも通気性が良くなるように悪あがきをする。
うん、今日も無風だ。ちくしょう…
制服を脱ぎ捨て畳八丈分の部屋に腰を降ろした。
脱ぎ捨てた制服を見て、今日は快晴だったし、今の内に洗濯しとっかなぁ。とか考えていたら、なんか見慣れないモノ発見。
それは今日の授業で配られて、勝手に持って帰ってきた球根だった。
しばらくその球根を見て、次に自分の部屋を見渡す。
暇だし、植えてみるかなぁ…。
別に本当に暇だったわけではないぞ。ただ、この殺風景な部屋に何か欲しいなぁ、と考えただけだ。
幸いにも球根の育て方は今授業でやっているので分かっている。
適当なプラスチック製の器の下に小さな穴を空け、その中に球根を入れ土を被せ水を与えた。
ホントは栄養価のある土を混ぜる方がよかったが、無いので仕方がない。外の適当な土だけにした。
一通りやり終わったツカサは、もう一度畳に腰を降ろし、そのまま横になって球根を植えた鉢を見た。
そういえば何の球根か聞いてなかったな…。まぁ、いいか。咲いてからのお楽しみだ。
その直後、不覚にも急激な睡魔に襲われる。
やべぇ…、洗濯してねぇ