やどぬし様
「…………………………………ちょっとまて?寝床ってなんのことだ?」
当たり前だが、この部屋は決して広くない。
つまりこの部屋で寝る以上、ツカサの目の届かない場所はないのだ。
だが、この少女は寝床を与えてもらったと言っている。
明らかにおかしい。
「そ、そんな不信そうな目で見ないでくださいよぉ。え〜と、寝床と言うのはですねぇ、あれのことですよぉ」
と、指差したのは窓。
窓の外には風を遮る邪魔な木があり、その木には…
「……寝床って鳥の巣だったのか」
「ち、違いますよぉ!!こっちですこっち!」
再び指差す。が、やはり窓以外なにもない。
「つーか、あんなとこでよく寝れたな。鳥に突かれなかったのか?」
「うぅ…、その反応はワザとなのですかぁ?それとも顔に似合わず天然なのですかぁ?うぅ…」
ついには半泣き状態になってしまった。
さすがにツカサも悪いと思い頭を撫でてやった。
なんか実家にいる犬を思い出すな。と、呑気なことを考えていたら少女は立ち上がり窓際に置いてあるソレを持ってきた。
「これですよ!」
ソレはどう見ても昨日俺が作った球根の鉢だった。
少女はその鉢を見下ろして冬の朝の布団の中にいるような、はにゃ〜とした顔をする。
「えっと…、つまりお前は昨日俺が間違えて持ち帰った球根だっていいたいのか?」
「はい!」
なるほど、それならば家の中にいた理由にも納得がいく。
それにしても見知らぬ男の部屋で寝ていたとは、なんというか無用心だな。
「それでですねぇ…」
「ん?」
少女が言葉を続ける。