ズルい-蓮井side-
ドキドキする。
体中が緊張して、触れたい、触れたいって思ってる。
好き、
司さんが。
その距離が切なくて、心臓が悲鳴をあげる。
「つ、司さん」
声が少し震えた。
「ん?」
視線だけあたしに移して、その切れ長の瞳にあたしが映る。
熱い顔が恥ずかしいのに、あたしはその吸い込まれそうに真っ黒な瞳に映りたくて必死で視線を合わせる。
「あ、あの」
だけど、駄目だ、続く言葉を持ってない。もう、どうしたいんだろ。
沸騰しそうな感覚の中で、司さんが心配そうにあたしを覗き込む。
「どうした?」
やだ、そんな顔させたいんじゃないのにな。
ひんやりとした腕があたしの額に触れて、
「やっぱ、風邪引いたか?」
申し訳なさそうに、司さんが低い声を出した。