ズルい-蓮井side-
違う、このアツサはそうじゃなくて、って言いたいけど、この距離にあたしが口を開ける筈がない。
「…もう寝ろ。悪かった」
司さんが謝る。だから、違うのに。
「ち、ちがっ」
やっと口から出た否定の言葉は彼の手で塞がれた。
「なんだ?面倒見るっつただろ」
スッとした眉が僅かに上がって、無愛想な声が更に乗っかる。
「俺じゃ嫌か」
すごい、この人、なんでこんなに自然に色気を振りまけるんだろう。
絶対、分かってない、自分の魅力。
こんな、些細な言葉ひとつひとつに容赦なく、鼓動が動かされる。
あたしは、また、熱を上げただけ。