アイシテル
小さな声でそう尋ねた僕に、大おばは何も答えず、ただギュッと僕の躰を抱きしめたのだった。

そして、グスグスと声を押し殺すようにして泣き始めた。

「――お母さんはね、遠いところへ行ってしまったのだよ…」

涙が邪魔で大おばはうまくしゃべることができなかったけど、僕はわかった。

母親は死んでしまったのだ…と。

幼い頃から、母親は心臓に病を抱えていた。

僕が眠った後で、母親は突然発作を起こした。

異常に気づいた父親が救急車を呼んで、病院へ運ばれたものの、この世から去ってしまった。

医師の懸命な処置もむなしく、母親は亡くなった。

僕が眠っている間に、僕が何も知らない間に、母親はこの世を去ってしまった。

幼い僕は、突然起こった出来事を信じることができなかった。
< 14 / 178 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop