アイシテル
手なれたように料理をする彼女の姿を僕は見つめた。

ああ、よくできた理想の少女だ…と、心の中で呟いた。

ウェーブのかかった黒い髪に陶器のような白い肌、猫のような大きな瞳に小ぶりの鼻、鮮やかなまでに赤い小さな唇――彼女は、僕の“理想”の少女だ。

僕の理想で埋めた少女だ。

服のうえからわかる躰の線の細さに短めのワンピースから覗く細い脚も、全て僕の理想だ。

しなやかな指先も、みんな僕の理想で埋められている。

ここまでになるのに、少なくとも10年はかかっている。

何故なら、僕と出会った彼女は11歳のまだ小さな少女だったからだ。
< 5 / 178 >

この作品をシェア

pagetop