アイシテル
タイルの床に、聖が倒れている。

勢いよく出てくるシャワーが、そんな彼女の躰を雨のように打っていた。

「聖!」

名前を呼んで、僕は聖を抱き起こした。

目を閉じて眠っているかのような聖の整った顔が、実母を思い出させた。

「聖!」

躰を揺すって聖を呼びかけると、うっすらと彼女の目が開いた。

よかった、死んでいない。

そのことに、僕はホッと胸をなで下ろした。

聖の声がなかったから。

聖が倒れていたから。

何かあったんじゃないかと思っていた。
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